現代の抽象代数学、ホモロジー代数学、代数的位相幾何学、代数幾何学、およびトポス理論において、無限のサイズをもつ構造や極限・余極限操作を統制するツールとして超限帰納法 (transfinite induction) および 超限構成 (transfinite construction) は極めて中心的かつ不可欠な役割を果たしている。
有限のステップ(代数的な閉包や生成過程など)で構造が閉じない場合、順序数 $\alpha$ に沿って帰納的に構成を無限回繰り返すことで目的の性質を満たす対象や射を統一的に構成することができる。例えば、代数的閉体の構成や自由代数の構成といった古典的な集合論的構成は、圏論の視点においては「超限押し出し列 (transfinite pushout sequence)」や「有向余極限 (directed colimit)」の構成として抽象化・一般化される。
本論文形式の解説では、現代圏論・層論・トポス理論・凝縮数学における超限帰納法および超限構成の主要な応用事例である以下の7つの大定理・構成理論を網羅し、その定義、構造的証明、具体的な応用例、証明のギャップを埋めた完全な論証を提供する。
圏 $\mathcal{A}$ がアーベル圏 (abelian category) であるとは、以下の条件をすべて満たすことをいう。
アーベル圏 $\mathcal{A}$ において、有向集合 $I$(任意の $i, j \in I$ に対し $i \le k, j \le k$ となる $k \in I$ が存在する半順序集合)から $\mathcal{A}$ への図式 $(A_i)_{i \in I}$ の余極限を有向余極限 (directed colimit) と呼ぶ。
アーベル圏 $\mathcal{A}$ が AB5 条件 を満たすとは、任意の小直和(arbitrary small coproducts)が存在し、かつ任意の有向図式の短完全列の族
$$ 0 \to A_i \xrightarrow{\ f_i\ } B_i \xrightarrow{\ g_i\ } C_i \to 0 \quad (i \in I) $$に対して、余極限を取る操作が完全列を保存すること、すなわち
$$ 0 \to \varinjlim_{i \in I} A_i \xrightarrow{\ \varinjlim f_i\ } \varinjlim_{i \in I} B_i \xrightarrow{\ \varinjlim g_i\ } \varinjlim_{i \in I} C_i \to 0 $$が再び $\mathcal{A}$ における短完全列となることをいう。
アーベル圏 $\mathcal{A}$ の対象 $G$ が生成子 (generator) であるとは、関手 $\mathrm{Hom}_{\mathcal{A}}(G, -) : \mathcal{A} \to \mathrm{Set}$ が忠実であることをいう。これは、任意の相異なる平行射 $f, g : A \to B$ ($f \neq g$)に対して、ある射 $h : G \to A$ が存在して $f \circ h \neq g \circ h$ となることと同値である。
AB5 条件を満たし、かつ生成子 $G$ をもつアーベル圏を Grothendieck 圏 (Grothendieck category) と呼ぶ。
対象 $A \in \mathcal{A}$ の部分対象 (subobject) とは、$A$ へのモノ射 $m : U \hookrightarrow A$ の同値類のことである($m_1 : U_1 \hookrightarrow A$ と $m_2 : U_2 \hookrightarrow A$ が同値とは、同型 $i : U_1 \cong U_2$ が存在して $m_2 \circ i = m_1$ となること)。$A$ の部分対象全体の集合(の同値類)を $\mathcal{S}(A)$ で表す。Grothendieck 圏においては、任意の対象 $A$ に対して $\mathcal{S}(A)$ は小集合(small set)となる。
アーベル圏 $\mathcal{A}$ の対象 $I$ が単射的対象 (injective object) であるとは、共変関手 $\mathrm{Hom}_{\mathcal{A}}(-, I) : \mathcal{A}^{\mathrm{op}} \to \mathrm{Ab}$ が完全関手であることをいう。同値な条件として、任意のモノ射 $i : A \hookrightarrow B$ と任意の射 $f : A \to I$ に対して、ある射 $\tilde{f} : B \to I$ が存在して $\tilde{f} \circ i = f$ を満たすことが挙げられる。
アーベル圏 $\mathcal{A}$ が十分に単射的な対象を持つ (has enough injectives) とは、任意の対象 $M \in \mathcal{A}$ に対して、ある単射的対象 $I$ へのモノ射 $j : M \hookrightarrow I$ が存在することをいう。
$G$ を生成子とする Grothendieck 圏 $\mathcal{A}$ の対象 $E$ について、以下は同値である。
(1 $\implies$ 2) は単射的対象の定義から明らかである。
(2 $\implies$ 1) を示す。任意のモノ射 $i : A \hookrightarrow B$ と射 $f : A \to E$ が与えられたとする。対 $(A', f')$ の集合 $\mathcal{P}$ を、$A \subset A' \subset B$ なる部分対象 $A'$ と $f$ の延長 $f' : A' \to E$ の組全体とする。$\mathcal{P}$ に包含関係による半順序を定めると、Zornの補題により極大元 $(M, g)$ が存在する。
$M = B$ であることを背理法で示す。仮に $M \subsetneq B$ とすると、$M$ に含まれない $B$ の要素に対応して、ある射 $h : G \to B$ であってその像が $M$ に含まれないものが存在する($G$ が生成子であるため)。
引き戻し(pullback)図式を構成する:
$$ \begin{array}{ccc} U & \hookrightarrow & G \\ \downarrow & & \downarrow{\scriptstyle h} \\ M & \hookrightarrow & B \end{array} $$ここで $U = h^{-1}(M) \hookrightarrow G$ は $G$ の部分対象である。引き戻しの性質により、合成 $U \to M \xrightarrow{g} E$ が定義される。仮定 (2) より、この射は $\tilde{g} : G \to E$ に延長される。
押し出し(pushout)図式を用いて $M' = M + h(G) \subset B$ 上の射 $g' : M' \to E$ を定義すると、これは $g$ の厳密な延長となり $(M, g)$ の極大性に矛盾する。したがって $M = B$ であり、$E$ は単射的である。
任意の Grothendieck 圏 $\mathcal{A}$ は十分に単射的な対象を持つ。
ステップ 1:正則基数の選定
$\mathcal{A}$ の生成子を $G$ とする。$G$ の部分対象全体の集合 $\mathcal{S}(G)$ の濃度を $|\mathcal{S}(G)|$ とする。基数 $|\mathcal{S}(G)|$ よりも厳密に大きい正則共終数(regular cofinality)をもつ正則無限基数 $\kappa$ を一つ固定する(例えば $\kappa = |\mathcal{S}(G)|^+$)。
ステップ 2:超限押し出し列 $(M_\alpha)_{\alpha \le \kappa}$ の超限帰納的構成
与えられた任意の対象 $M \in \mathcal{A}$ に対して、順序数 $\alpha \le \kappa$ に関する超限帰納法により対象の超限列 $(M_\alpha)_{\alpha \le \kappa}$ およびモノ射の族 $(j_{\alpha, \beta} : M_\alpha \hookrightarrow M_\beta)_{\alpha \le \beta}$ を構成する。
ステップ 3:極限対象 $M_\kappa$ の単射性の検証
構成された超限列の極端元 $M_\kappa = \varinjlim_{\alpha < \kappa} M_\alpha$ が Baer の判定法(補題 2.6)を満たすことを示す。
$G$ の任意の部分対象 $U \hookrightarrow G$ および任意の射 $g : U \to M_\kappa$ をとる。 $G$(したがってその部分対象 $U$)は小生成子に起因して $\kappa$-小対象的性質をもつ。具体的には、$\kappa > |\mathcal{S}(G)|$ かつ $\kappa$ が正則基数であることから、任意の射 $g : U \to M_\kappa = \varinjlim_{\alpha < \kappa} M_\alpha$ の像は、ある $\alpha_0 < \kappa$ における $M_{\alpha_0}$ へ分解(factor)する。すなわち、ある射 $g_0 : U \to M_{\alpha_0}$ が存在して $$ g = j_{\alpha_0, \kappa} \circ g_0 $$ と表される。
この組 $s = (U, g_0)$ は後続段階 $\alpha_0 + 1$ の構成における集合 $S_{\alpha_0}$ の元である。押し出し図式の可換性より、射 $g_0 : U \to M_{\alpha_0}$ は $M_{\alpha_0+1}$ への合成射において $G$ からの射 $h : G \to M_{\alpha_0+1}$ へと延長される: $$ h \circ i_U = j_{\alpha_0, \alpha_0+1} \circ g_0 $$ この射 $h$ とモノ射 $j_{\alpha_0+1, \kappa} : M_{\alpha_0+1} \hookrightarrow M_\kappa$ を合成して得られる射 $$ \tilde{g} = j_{\alpha_0+1, \kappa} \circ h : G \to M_\kappa $$ を考えると、 $$ \tilde{g} \circ i_U = j_{\alpha_0+1, \kappa} \circ h \circ i_U = j_{\alpha_0+1, \kappa} \circ j_{\alpha_0, \alpha_0+1} \circ g_0 = j_{\alpha_0, \kappa} \circ g_0 = g $$ となり、$\tilde{g}$ は $g$ の $G$ 全体への延長である。
補題 2.6(Baer の判定法)により、$M_\kappa$ は単射的対象である。また基底射 $M = M_0 \hookrightarrow M_\kappa$ はモノ射の合成(および有向余極限)としてモノ射である。したがって $\mathcal{A}$ は十分に単射的な対象を持つ。
環 $R$ 上の左加群の圏 $\mathcal{A} = \mathrm{Mod}_R$ は、生成子 $G = R$ をもち、任意の小直和と有向余極限の完全性(AB5)を満たす Grothendieck 圏である。この理論は古典的な「加群の単射的包絡(injective hull)」の構成定理に対応し、任意の $R$-加群 $M$ が単射的加群に埋め込めることを保証する。この単射的対象の具体的な構成において、不足している方程式の解を添加する押し出し操作を、超限帰納法を用いて正則基数 $\kappa$ 回にわたり反復する論法が本質的に用いられている。
位相空間 $X$ 上のアーベル群の層の圏 $\mathrm{Sh}(X, \mathrm{Ab})$ は Grothendieck 圏である。この定理により、層の圏において単射的分解が常に存在し、Grothendieck 複体コホモロジー理論が一般の位相空間上で矛盾なく定義される。層の単射的分解を構成する際にも、局所的な切断の拡張を大域的に保証するために、超限帰納法を用いた超限押し出し列の構成が不可欠となっている。
順序数 $\lambda$ に対し、圏 $\mathcal{C}$ における $\lambda$-系列 ($\lambda$-sequence) とは、$\lambda$ から $\mathcal{C}$ への共変関手 $X : \lambda \to \mathcal{C}$ であって、任意の極限順序数 $\gamma < \lambda$ に対して $$ X_\gamma = \varinjlim_{\beta < \gamma} X_\beta $$ を満足するものをいう。合成射 $X_0 \to \varinjlim_{\alpha < \lambda} X_\alpha$ を 超限合成 (transfinite composition) と呼ぶ。
正則基数 $\kappa$ に対し、対象 $K \in \mathcal{C}$ が $\kappa$-小対象 ($\kappa$-small object) であるとは、任意の $\kappa$-系列 $X$ に対して、自然な双射 $$ \varinjlim_{\alpha < \kappa} \mathrm{Hom}_{\mathcal{C}}(K, X_\alpha) \xrightarrow{\ \cong\ } \mathrm{Hom}_{\mathcal{C}}\left( K, \varinjlim_{\alpha < \kappa} X_\alpha \right) $$ が存在することである。
圏 $\mathcal{C}$ の射 $i : A \to B$ および $p : X \to Y$ に対し、$p$ が $i$ に対して 右リフティング性 (right lifting property) を持ち、$i \perp p$ と表記するとは、任意の可換正方形
$$ \begin{array}{ccc} A & \longrightarrow & X \\ \downarrow{\scriptstyle i} & & \downarrow{\scriptstyle p} \\ B & \longrightarrow & Y \end{array} $$に対して、可換性を保つ対角射 $h : B \to X$(すなわち $h \circ i = u$ かつ $p \circ h = v$)が存在することである。射の集合 $I$ に対し、 $$ I^\perp = \{ p \in \mathrm{Mor}(\mathcal{C}) \mid \forall i \in I, \, i \perp p \} $$ と定める。
$\mathcal{C}$ を小余極限を持つ圏とし、$I$ を $\mathcal{C}$ の射の集合とする。$I$ のすべての射の始域(domain)が $\kappa$-小対象であるとする。このとき、$\mathcal{C}$ の任意の射 $f : X \to Y$ は $$ f = q \circ p $$ と因数分解できる。ここで、$p : X \to Z$ は $I$ の射の押し出しの超限合成であり、$q : Z \to Y$ は $q \in I^\perp$ を満たす。
超限順序数 $\alpha \le \kappa$ について対象 $Z_\alpha$ と射 $p_{\alpha, \beta} : Z_\alpha \to Z_\beta$ ($\alpha \le \beta$) および $q_\alpha : Z_\alpha \to Y$ を超限帰納法により構成する。
$Z = Z_\kappa$ とおき、$p = p_{0, \kappa} : X \to Z$, $q = q_\kappa : Z \to Y$ と定める。構築により $f = q \circ p$ であり、$p$ は $I$ の射の押し出しの超限合成である。
$q \in I^\perp$ であることを示す。任意の $i : A \to B \in I$ と可換正方形
$$ \begin{array}{ccc} A & \xrightarrow{\ u\ } & Z_\kappa \\ \downarrow{\scriptstyle i} & & \downarrow{\scriptstyle q} \\ B & \xrightarrow{\ v\ } & Y \end{array} $$を考える。仮定より $A$ は $\kappa$-小対象であるから、射 $u : A \to Z_\kappa = \varinjlim_{\alpha < \kappa} Z_\alpha$ はある $\alpha < \kappa$ に対する射 $u_\alpha : A \to Z_\alpha$ を経由する。 正方形の可換性より、$q_\alpha \circ u_\alpha = v \circ i$ とみなしてよい。 すると、三つ組 $(i, u_\alpha, v)$ は $S_\alpha$ の元となる。 $Z_{\alpha+1}$ の押し出しの構成により、射 $h_{\alpha+1} : B \to Z_{\alpha+1}$ が存在して、$h_{\alpha+1} \circ i = p_{\alpha, \alpha+1} \circ u_\alpha$ かつ $q_{\alpha+1} \circ h_{\alpha+1} = v$ を満たす。 この $h_{\alpha+1}$ と標準的射 $p_{\alpha+1, \kappa} : Z_{\alpha+1} \to Z_\kappa$ を合成して得られる射 $h = p_{\alpha+1, \kappa} \circ h_{\alpha+1} : B \to Z_\kappa$ をとると、 $$ h \circ i = u \quad \text{かつ} \quad q \circ h = v $$ が成り立つ。したがって $q \in I^\perp$ が証明された。
位相空間の圏 $\mathrm{Top}$ において、球面から境界ディスクへの包含射の族 $I = \{ S^{n-1} \hookrightarrow D^n \mid n \ge 0 \}$ をとる。$S^{n-1}$ はコンパクト(すなわち $\aleph_0$-小対象)であるため、小対象論法を適用できる。空空間 $\varnothing \to X$ を分解することで、任意の位相空間 $X$ に対する CW 錯体近似が得られる。この近似空間は、各次元のセルを付加してホモトピー群の要素を潰す操作を、超限帰納法を用いて極限順序数まで反復することによって構成される。
小圏 $\mathcal{C}$ の対象 $X$ 上のふるい (sieve) とは、関手 $y(X) = \mathrm{Hom}_{\mathcal{C}}(-, X)$ の部分関手 $S \subset y(X)$ のことである。 $\mathcal{C}$ 上の Grothendieck 位相 (Grothendieck topology) $J$ とは、各対象 $X \in \mathcal{C}$ に $X$ 上のふるいの集合 $J(X)$ を割り当てる規則であって、以下の公理を満たすものをいう:
組 $(\mathcal{C}, J)$ をサイト (site) と呼ぶ。
前層 $F : \mathcal{C}^{\mathrm{op}} \to \mathrm{Set}$ が 層 (sheaf) であるとは、任意の $X \in \mathcal{C}$ および任意の $S \in J(X)$ に対し、自然な射 $$ \mathrm{Hom}_{\mathrm{PSh}(\mathcal{C})}(y(X), F) \longrightarrow \mathrm{Hom}_{\mathrm{PSh}(\mathcal{C})}(S, F) $$ が全単射となることである。前層 $F$ に対し、そのプラス構成 (plus construction) $F^+$ を $$ F^+(X) = \varinjlim_{S \in J(X)} \mathrm{Hom}_{\mathrm{PSh}(\mathcal{C})}(S, F) $$ により定義する。
任意の Grothendieck サイト $(\mathcal{C}, J)$ に対し、十分大きな正則基数 $\kappa$ が存在する。前層 $F$ に対し、超限帰納法により
と定義すると、$F^{(\kappa)}$ は層であり、前層の圏 $\mathrm{PSh}(\mathcal{C})$ から層の圏 $\mathrm{Sh}(\mathcal{C}, J)$ への左随伴関手 (層化関手; sheafification functor) $\mathbf{a}F = F^{(\kappa)}$ を与える。
各対象 $X \in \mathcal{C}$ に対する被覆ふるい $S \in J(X)$ の全体の集合を $J_{\mathrm{all}} = \bigcup_{X \in \mathcal{C}} J(X)$ とする。$\kappa$ を $J_{\mathrm{all}}$ の任意の元の要素数および $J(X)$ の濃度より真に大きい正則基数とする。
超限列 $(F^{(\alpha)})_{\alpha \le \kappa}$ は正準射 $\eta_{F^{(\alpha)}} : F^{(\alpha)} \to F^{(\alpha+1)}$ による余極限系をなす。 $\kappa$ が十分大きいことから、任意の $X \in \mathcal{C}$ および任意の $S \in J(X)$ について、関手 $\mathrm{Hom}_{\mathrm{PSh}(\mathcal{C})}(S, -)$ は $\kappa$-有向余極限と可換になる。すなわち、 $$ \mathrm{Hom}_{\mathrm{PSh}(\mathcal{C})}\left( S, \varinjlim_{\alpha < \kappa} F^{(\alpha)} \right) \cong \varinjlim_{\alpha < \kappa} \mathrm{Hom}_{\mathrm{PSh}(\mathcal{C})}(S, F^{(\alpha)}) $$ が成立する。したがって、
$$ \mathrm{Hom}_{\mathrm{PSh}(\mathcal{C})}(S, F^{(\kappa)}) \cong \varinjlim_{\alpha < \kappa} \mathrm{Hom}_{\mathrm{PSh}(\mathcal{C})}(S, F^{(\alpha)}) $$ $$ \ \ \ \ \ \ \ \ \ \ \ \ \ \ \ \ \ \ \ \ \ \ \ \ \ \ \ \ \ \ \ \ \ \ \ \ \cong \varinjlim_{\alpha < \kappa} (F^{(\alpha)})^+(X) $$ $$ \ \ \ \ \ \ \ \ \ \ \ \ \ \ \ \ \ \ \ \ \ \ \ \ \ \ \ \ \ \ \ \ \ \ \ \ \cong \varinjlim_{\alpha < \kappa} F^{(\alpha+1)}(X) \cong F^{(\kappa)}(X) \cong \mathrm{Hom}_{\mathrm{PSh}(\mathcal{C})}(y(X), F^{(\kappa)}) $$が成り立つ。これは $F^{(\kappa)}$ が $J$ に関する層の定義条件を満たすことを意味する。 また、各段階での射 $F \to F^{(\kappa)}$ が普遍性を満たすことは、層 $G$ に対する $\mathrm{Hom}_{\mathrm{PSh}(\mathcal{C})}(F^{(\alpha)}, G) \cong \mathrm{Hom}_{\mathrm{PSh}(\mathcal{C})}(F, G)$ を超限帰納法で示すことにより従う。
位相空間上の開集合格子サイトなどの有限型サイトでは $F^{++}$(2回のプラス構成)で層が得られるが、無制限な無限被覆を許す一般の Grothendieck 位相や濃密位相 (dense topology) においては、分離的(separated)前層であっても 1 回または 2 回のプラス構成では層にならない。局所的な貼り合わせ条件を完全に満たす層を得るためには、プラス構成を超限帰納法によって超限順序数 $\omega_1$ 以上反復適用することが不可欠となる。
圏 $\mathcal{C}$ の対象の小集合 $K \subset \mathrm{Ob}(\mathcal{C})$ が 余生成子集合 (cogenerating set) であるとは、任意の相異なる平行射 $f, g : A \to B$ ($A, B \in \mathcal{C}$)に対して、ある $K_0 \in K$ および射 $h : B \to K_0$ が存在して、$h \circ f \neq h \circ g$ となることである。
圏 $\mathcal{C}$ が 余well-powered (co-well-powered) であるとは、任意の対象 $A \in \mathcal{C}$ に対して、$A$ の商対象(商対象の同値類)全体の集合 $\mathrm{Sub}_{\mathrm{quot}}(A)$ が小集合となることである。
$\mathcal{C}$ を小完備かつ余well-poweredな圏とし、$K \subset \mathrm{Ob}(\mathcal{C})$ を小余生成子集合とする。関手 $G : \mathcal{C} \to \mathcal{D}$ が小極限を保存するならば、$G$ は左随伴関手 $F : \mathcal{D} \to \mathcal{C}$ を持つ。
Freyd の随伴関手定理により、小極限を保存する関手 $G : \mathcal{C} \to \mathcal{D}$ が左随伴を持つためには、任意の $D \in \mathcal{D}$ に対して解集合条件 (solution set condition) が満たされることを示せば十分である。
$D \in \mathcal{D}$ を固定する。各 $K_0 \in K$ に対し、$\mathrm{Hom}_{\mathcal{D}}(D, G(K_0))$ は小集合である。積対象 $$ P = \prod_{K_0 \in K} \prod_{\sigma \in \mathrm{Hom}_{\mathcal{D}}(D, G(K_0))} K_0 $$ を考える。$K$ は小集合であり、各 $\mathrm{Hom}_{\mathcal{D}}(D, G(K_0))$ も小集合であるため、この積は小積であり、$\mathcal{C}$ の小完備性から $P \in \mathcal{C}$ が存在する。 $\mathcal{C}$ は余well-poweredであるため、$P$ の商対象全体の代表系を $S_D = \mathcal{Q}(P)$ とおくと、$S_D$ は小集合である。
$S_D$ が解集合条件を満たすことを示す。任意の $C \in \mathcal{C}$ および射 $f : D \to G(C)$ をとる。 各 $K_0 \in K$ と $h \in \mathrm{Hom}_{\mathcal{C}}(C, K_0)$ に対し、$G(h) \circ f \in \mathrm{Hom}_{\mathcal{D}}(D, G(K_0))$ である。 積の普遍性により、射 $e : C \to P$ であって、$(K_0, G(h) \circ f)$ 成分への射影 $\pi_{K_0, G(h) \circ f} : P \to K_0$ との合成が $\pi_{K_0, G(h) \circ f} \circ e = h$ となるものが一意に存在する。
$\mathcal{C}$ は小完備かつ余well-poweredであるため、任意の射はエピ射とモノ射の合成に分解できる。$e$ のエピ・モノ分解を $$ C \xrightarrow{\ p\ } Q \xrightarrow{\ m\ } P $$ ($p$ はエピ射、$m$ はモノ射)とする。$Q$ は $P$ の商対象であるから、$Q \in S_D$ である。
普遍射 $d : D \to G(P)$ を、各成分 $(K_0, \sigma)$ への射影の $G$ による像 $G(\pi_{K_0, \sigma}) : G(P) \to G(K_0)$ との合成が $\sigma : D \to G(K_0)$ に一致する唯一の射として定める。 $K$ が余生成子集合であることと $G$ が等化子および小積を保存することから、$f : D \to G(C)$ は $G(p) : G(C) \to G(Q)$ を経由して $Q \in S_D$ への射に分解する。 したがって、小集合 $S_D$ は解集合条件を満たし、$G$ は左随伴関手 $F$ を持つ。
コンパクト Hausdorff 空間の圏 $\mathrm{CHaus}$ は小完備かつ余well-poweredであり、単位区間 $I = [0, 1]$ が単一の単射的余生成子となる。忘却関手 $U : \mathrm{CHaus} \to \mathrm{Set}$ に特殊随伴関手定理を適用することにより、左随伴関手である Stone-Čech 完備化関手の存在が導かれる。完備化空間の構成を直接的に行うアプローチ(例えば有界連続関数環の極大イデアル空間の構成など)においても、部分空間の閉包や関数の拡張を超限帰納法によって極限まで繰り返す論法が基礎となっている。
正則基数 $\lambda$ に対し、
圏 $\mathcal{C}$ の射の小集合 $W \subset \mathrm{Mor}(\mathcal{C})$ に対し、対象 $X \in \mathcal{C}$ が $W$-局所的 ($W$-local) であるとは、任意の $w : A \to B \in W$ に対して誘導される写像 $$ w^* : \mathrm{Hom}_{\mathcal{C}}(B, X) \longrightarrow \mathrm{Hom}_{\mathcal{C}}(A, X) $$ が全単射となることである。$W$-局所的対象全体からなるフル部分圏を $\mathcal{C}_W$ とする。
$\mathcal{C}$ を局所可提示圏とし、$W \subset \mathrm{Mor}(\mathcal{C})$ を射の小集合とする。このとき、フル部分圏 $\mathcal{C}_W$ は反射的部分圏 (reflective subcategory) である。すなわち、包含関手 $i : \mathcal{C}_W \hookrightarrow \mathcal{C}$ は左随伴関手 $L : \mathcal{C} \to \mathcal{C}_W$ (局所化関手) を持つ。
$\mathcal{C}$ が局所 $\lambda_0$-可提示であるとする。$W$ は小集合であるため、ある正則基数 $\lambda \ge \lambda_0$ が存在して、$W$ に含まれるすべての射の始域および終域は $\lambda$-可提示対象となる。
各対象 $X \in \mathcal{C}$ に対し、超限帰納法により順序数 $\alpha \le \lambda$ に添え字づけられた超限列 $(X_\alpha)_{\alpha \le \lambda}$ を構成する。
$L(X) = X_\lambda$ と定める。 $L(X)$ が $W$-局所的であることを示す。 任意の $w : A \to B \in W$ と射 $f : A \to X_\lambda = \varinjlim_{\alpha < \lambda} X_\alpha$ をとる。 $A$ は $\lambda$-可提示対象であるため、射 $f$ はある $\alpha < \lambda$ における射 $f_\alpha : A \to X_\alpha$ を経由する。 後続段階の押し出しの構成により、合成 $j_\alpha \circ f_\alpha : A \to X_{\alpha+1}$ は射 $g_{\alpha+1} : B \to X_{\alpha+1}$ へ拡張される。 標準的射 $X_{\alpha+1} \to X_\lambda$ との合成 $g : B \to X_\lambda$ をとると $g \circ w = f$ が成り立つ。 核対に対する同様の超限反復押し出しにより単射性も確保されるため、$w^*$ は全単射となる。 したがって $X_\lambda \in \mathcal{C}_W$ であり、$L : \mathcal{C} \to \mathcal{C}_W$ は左随伴関手を与える。
環 $R$ 上の鎖複体の圏 $\mathrm{Ch}(R)$ は局所可提示圏である。ホモトピー同値を与える射の集合 $W$ に対する小局所化を行うことで、導来圏 (derived category) $D(R) = \mathrm{Ch}(R)_W$ への反射関手が獲得される。この局所化関手は、ホモトピー同値を厳密に可逆にするためのマッピングコーンの付加操作を、超限帰納法を用いて十分大きな正則基数 $\lambda$ まで反復する小対象論法によって具体的に構成される。
Hausdorff 空間 $S$ が 極端不連結 (extremally disconnected) であるとは、任意の開集合の閉包が再び開集合(すなわちクロープン集合)となることである。 Gleason の定理により、コンパクト Hausdorff 空間の圏 $\mathrm{CHaus}$ における射影的対象 (projective object) は、極端不連結コンパクト Hausdorff 空間に他ならない。また、任意の $K \in \mathrm{CHaus}$ に対して、極端不連結コンパクト Hausdorff 空間 $S$ からの全射連続写像 $\pi : S \twoheadrightarrow K$(Gleason の被覆)が存在する。
$\mathrm{ExtrDisc}$ を極端不連結コンパクト Hausdorff 空間と連続写像からなる圏とする。 凝縮集合 (condensed set) とは、$\mathrm{ExtrDisc}$ 上の Grothendieck サイト(被覆は有限個の共同全射 (jointly surjective) な射の族)上の層 $F : \mathrm{ExtrDisc}^{\mathrm{op}} \to \mathrm{Set}$ のことである。
集合論的パラドックスを回避するため、到達不能基数 $\kappa$ を固定し、$\kappa$-小な極端不連結コンパクト Hausdorff 空間の圏 $\mathrm{ExtrDisc}_\kappa$ 上の層の圏 $\mathrm{Cond}_\kappa(\mathrm{Set})$ として定式化を行う。
凝縮集合の圏 $\mathrm{Cond}(\mathrm{Set})$ および凝縮アーベル群の圏 $\mathrm{Cond}(\mathrm{Ab})$ における任意の余極限や極限は、極端不連結空間 $S \in \mathrm{ExtrDisc}$ 上の評価 $F(S)$ の超限演算へと完全還元される。特に、導来圏 $D(\mathrm{Cond}(\mathrm{Ab}))$ における Ext 群の消滅は、超限有向余極限と極限の可換性を用いて証明される。
極端不連結空間 $S$ が $\mathrm{CHaus}$ における射影的対象であるという性質により、$\mathrm{ExtrDisc}$ 上の前層 $F$ が層であるための必要十分条件は、有限直積を保存すること、および任意の極端不連結空間の有限被覆に対して層の条件を満たすことに帰着される。
任意の位相空間 $X$ に対し、対応する凝縮集合 $\underline{X}(S) = \mathcal{C}(S, X)$ を考える。 完備化された (completed) 凝縮代数や凝縮アーベル群の導来圏における射の計算において、対象を基数 $\kappa$ に基づく超限帰納法により $$ M = \varprojlim_{\alpha < \kappa} M_\alpha $$ のような超限射影的極限として表示することで、高次 Ext 群やコホモロジーの消滅定理が超限有向余極限と超限極限の可換性を通じて証明される。
位相線形空間のテンソル積やコホモロジー計算では、核や余核が閉でないため圏がアーベル圏にならないという代数的な障害が生じる。凝縮代数に移行することにより、完全なアーベル圏 $\mathrm{Cond}(\mathrm{Ab})$ の枠組みが手に入る。ここでは、コーシー列の極限を追加するような位相的完備化のプロセスを、超限帰納法を用いた代数的な射影的極限の反復として捉え直すことで、位相的障害を克服している。
圏 $\mathcal{E}$ が Grothendieck topos であるとは、ある小サイト $(\mathcal{C}, J)$ に対し、層の圏 $\mathrm{Sh}(\mathcal{C}, J)$ と同値になることである。
圏 $\mathcal{E}$ が Grothendieck topos であるための必要十分条件は、以下の条件をすべて満たすことである:
(必要性) 層の圏 $\mathrm{Sh}(\mathcal{C}, J)$ が条件 1–6 を満たすことは標準的である。
(十分性) 条件 1–6 を満たす $\mathcal{E}$ に対し、小サイト $(\mathcal{C}, J)$ を構成して $\mathcal{E} \cong \mathrm{Sh}(\mathcal{C}, J)$ となることを示す。
小生成子集合 $\mathcal{S}$ から生成されるフル部分圏を $\mathcal{C} \subset \mathcal{E}$ とする。$\mathcal{C}$ は小圏である。 $\mathcal{C}$ 上の Grothendieck 位相 $J$ を次のように定める:$X \in \mathcal{C}$ 上のふるい $S \subset y(X)$ が $S \in J(X)$ であるとは、$S$ に属する射の像の余極限 $U = \varinjlim_{(Y \to X) \in S} Y \to X$ が $\mathcal{E}$ においてエピ射となることである。
関手 $F : \mathcal{E} \to \mathrm{PSh}(\mathcal{C})$ を $F(E)(X) = \mathrm{Hom}_{\mathcal{E}}(X, E)$ ($X \in \mathcal{C}, E \in \mathcal{E}$) により定める。
ステップ 1: $\mathcal{S}$ が生成子集合であることと、$\mathcal{E}$ において余極限が普遍的かつ同値関係が実効的であることから、任意の $E \in \mathcal{E}$ に対して $F(E)$ は $J$ に関する層となる。すなわち $F$ は関手 $F : \mathcal{E} \to \mathrm{Sh}(\mathcal{C}, J)$ を誘導する。
ステップ 2(充満忠実性): 任意の $E \in \mathcal{E}$ に対し、$\mathcal{S}$ の元を超限列として組み合わせることで $E$ を $\mathcal{C}$ の元の余極限として表示する。 正則基数 $\kappa$ を十分大きくとり、超限順序数 $\alpha < \kappa$ について $\mathcal{S}$ の元の直和および押し出しを超限反復構成する。 まず、$\mathcal{S}$ の元の直和からのエピ射 $E_0 = \bigoplus_{j \in J_0} S_j \to E$ ($S_j \in \mathcal{S}$) をとる。 核対 $R_0 = E_0 \times_E E_0$ を作り、$R_0$ も $\mathcal{S}$ の元の直和からのエピ射 $R_0' = \bigoplus_{k \in J_0'} S_k \to R_0$ で覆う。 同値関係が実効的であることから、$E$ は $R_0' \rightrightarrows E_0$ の余等化子 (coequalizer) として表される。
ステップ 3(本質的全射性): 任意の層 $G \in \mathrm{Sh}(\mathcal{C}, J)$ に対し、$G$ は $\mathcal{C}$ の米田埋め込み像 $y(C)$ の超限余極限(小対象論法による層化の像)として表示できる。 $\mathcal{E}$ は小余極限を持つため、$G$ の表示に対応する余極限図式を $\mathcal{E}$ 内で計算することで対象 $E_G \in \mathcal{E}$ が構築でき、$F(E_G) \cong G$ となる。
したがって、$\mathcal{E} \cong \mathrm{Sh}(\mathcal{C}, J)$ が成り立つ。
Giraud の定理により、任意の Grothendieck topos は具象的な層トポスとして実現される。例えば、群 $G$ の作用集合の圏 $G\text{-}\mathrm{Set}$ は、1元からなる小生成子集合をもつ Grothendieck topos である。Giraudの定理の証明において、抽象的な topos $\mathcal{E}$ からサイトを再構成し同値性を示す過程では、生成子からのエピ射による被覆と核対の生成を超限帰納法によって反復し、対象を余極限として表示するステップが鍵となっている。