・すべて2011年検定合格の1年生用算数教科書の朱註編からの抜粋である。1年生用算数教科書は一巻のみ。
・数字は 朱註編の頁:対応する教科書の頁 を表す。/ は対応する頁がないことを示す。
・赤字は教科書本文内への朱書の注記。
・朱註編ごとに引用者のコメントを付す。
・東京書籍の指導書については、すでに
で、「合併の操作では両手を使い、増加の操作では片方の手でそれぞれの数のブロックを寄せたい」という記述を引用したため、今回は確認の対象としなかった。
・学校図書の指導書については、すでに
http://8254.teacup.com/kakezannojunjo/bbs/t15/20-21
においてpapapaさんによる詳細な報告があるため、今回は確認の対象としなかった。
・2002年検定合格の算数教科書の朱註編からすでに、合併には両手を用い、増加には片手を用いてブロック、数図ブロックないし積み木を操作しなければならないという記述が、全ての教科書会社で確認される。
教育出版
66:36
本文内に片手で右から寄せる挿絵がある。
手の動きをとらえさせる。
2個の積み木を、初めにあった3個の方へ移動させる動きをとおして、「ふえる」という増加の場を確実につかませる。
言語化して動きをとらえさせる。
加法の場(増加と合併)
前単元までに、数の合成や分解についての学習を経験してきた。本単元では、積み木などの操作をとおして増加や合併の場で加法が用いられることを理解させる。どちらの場合も、言葉による理解だけではなく、操作をとおして具体的にとらえさせることが大切である。
増加と合併の指導順については、以下の理由で増加を先に扱っている。
(1) 増加の場面は時間的経過を伴うので、積み木などの操作が容易で場面から式への抽象化が図りやすい。
(2) 減法での求残→求補(求差)の指導順と対応する。
67:37
式に表すことのよさ
場面を式に表すことによって、次のようなよさをとらえさせることが大切である。
(1) 事柄や関係を一般化して表すことができる。
例えば、3+2=5の式で、金魚でなく犬でもねこでも同じ式に表すことができる。
(2) 式の場面を簡潔に表すことができる。
例えば、「答え 5匹」だけではどのような場面であるかは不明である。そこで、3+2=5と表すことにより、「3匹いたところに2匹増えて5匹になった」とよみ取ることができる。
このように、式は場面を簡潔に表した算数の表現である。このことを、段階をふんで丁寧に指導したい。
水槽に金魚が3匹いる。そこへ2匹入れる。みんなで5匹になる。
→ 始めに3匹、2匹増えると5匹。
→ 3匹と2匹で5匹
→ 3と2で5
→ 3+2=5
星2の金魚の場面をノートに図でまとめさせる。このとき「はじめに」「ふえると」「ぜんぶで」の言葉を書かせ、数の関係をとらえやすくしておく。
図に対応して式を書き、このような、増えた数を求める場面を「たし算」ということを知らせる。
68:38
場面をとらえさせること
この段階における文章題は、「増えるといくつになりますか」という最小限の表現にとどめ、正式な文章題は加法の学習が進んでいってから扱うようにしている。
ここでは、挿絵を見て自由にお話させる中で、「初めに」いくつ、いくつ「増える」、「全部で」いくつというように、言葉を補いながら増加の場面をとらえさせていく。この段階を経ることによって、増加の場面の理解が定着し、文章のみでも状況を把握することができるようになっていくものと思われる。
69:39
積み木の操作活動
増加の場面同様、本時でも積み木の操作をとおして合併の意味を理解させる。
合併における積み木の操作は2つのまとまり(被加数と加数)を同時に操作することになるため、場面の把握が難しい子供もいるであろう。
指導にあたっては、まず、それぞれのまとまりを分けて並べさせ、数をきちんと認識させてから、たし合わせる操作をゆっくりとさせるようにする。そして、この積み木の動きに着目すると、増加の際に1つのまとまりにもう1つのまとまりを加えたことと同じ結果になることから、合併の場面もたし算で表せることを理解させる。
両者の異同をとらえさせ、加法の場の理解を確実にしておきたい。
指導:星3の金魚の場面をノートに図でまとめさせる。このように、合わせた数を求める場面もたし算であることを確認する。
71:41
加法を積み木や図などを用いて表現する活動
本時では、加法の場面を積み木や図などを用いて表現する算数的活動を取り上げる。
本単元で学習する1位数どうしの加法は、これから学習していくあらゆる計算の基礎となる内容である。ここで、加法の場面を積み木や図、更に式や言葉を用いて表現することは、加法の意味理解を深めるだけでなく、今後拡張されていく計算の意味や方法を、考えたり説明したりする際の道具として活用する準備ともなる。(略)
指導:積み木や図などを用いて、合併の加法は両側から同時に合わせる場面であることを表現させ、理解を深める。このとき、式や言葉も用いてよいことを知らせる。
友だちとお互いの表現を見せ合い、正しく表現できているか確認する。
同様にして[7]を扱い、増加の加法の場面についての理解を深める。一方の数を固定し、そこに2を加える操作が表現できているか、確認する。
引用者コメント:
・合併と増加の操作の違いを子どもたちのノートに反映させることを求める。
・「式に表すことのよさ」は答えだけ書くことと式も書くことの比較としては妥当だが、式から具体的状況が全て読み取れるとしている点で混乱している。
・正確な引用はできないが合併の文章題として適切でないものがあることにも注意を促している。例えば、ねこと犬の数を足すことは、動物という言葉を使って例えば「あわせて動物は何頭いるか」のようにいわないとだめらしい。
日本文教出版
44:30
発問:お話をしてみましょう。お話にあわせてブロックを動かしてみましょう。
青ポイント:左の猿が3個、右の猿が2個豆を持ってきたことを確かめ、別々の方向から豆を持ってきていることから、合併の場面であることを明らかにする。真ん中の切り株のところで豆をいっしょにすることに着目させ、合併のことば(あわせて・みんなでなど)を使いながら、ブロックを動かすことを大切にしたい。
45:31
発問:そうたさんとゆいさんは水槽に金魚を入れました。あわせたようすをブロックを使ってお話をしながら動かしてみましょう。
(略)
青ポイント:いちどノートやワークシートに、あわせたときの金魚の絵をかかせてもよい。板書には、あわせた結果がわかるように、金魚の切り絵を子供に貼らせるなどしてして示しておく。
48:34
発問:教科書p.31の場面とブロックの動かし方は同じですか。違いますか。
反応例:・違います。
・前は両方から動かしたけれど、今日は片方だけ動かします。
青ポイント:どのように違うか問い、動かし方の違いに着目させ、「あわせる」お話ではなく、切り株の上の豆が「ふえる」お話であることを確かめる。
51:37
本文:
[5> しきに あう えは どちらですか。 線(実際は図形)で むすびましょう。
2 + 6 = 8 ・ ・ 6個のケーキがテーブルにあり、2個が右から運ばれてくる図。
6 + 2 = 8 ・ ・ 2個のケーキがテーブルにあり、6個が右から運ばれてくる図。
×のような結び方を正解として朱書き。
欄外:
・式のよみ方を確かめる問題をする。
青ポイント はじめにケーキが□個あったことと後から△個増えたこととが、式の中の数字や記号とつなげて話せていなければ「+」の意味を問い返すなどして、確かめるようにする。
青ポイント 違う式を提示して、「この式だったらどんなお話になる?」と式をよませてもよい。
52:38
発問:4+5=9になるお話をつくりましょう。
赤ポイント:4や5のものはないか、たし算の式になるにはどうしたらよいかを問い、お話づくりに対する見通しを持たせる。
4・・・公園で遊んでいる子ども 赤い花 歩いているはと 青色のベンチ
5・・・遊びにきた子ども 黄色い花 飛んでいるはと オレンジ色のベンチ
+・・・あわせて ふえると ぜんぶで など
結果が9になったことも話の中に入れなくてはならないことを知らせる。
55:41
「たしざんえほん」を作らせる。本文には「あわせて」と「ふえると」の2場面が例示されているが、子どもは好きな場面を選べばよいことになっている。ただし赤ポイントで「合併、増加の2場面のお話を発表させるようにする」とある。
絵本づくりについて
算数の学習指導要領では、1年から「数量関係」領域が設定され、各学年において、いくつかの算数的活動が例示されている。
1年では、算数的活動の例として、「数量について具体的な場面を式に表したり、式を具体的な場面に結びつけたりする活動」が示されており、教科書本文においても、公園などの具体的な場面に結び付けて探した数量についてお話をつくったり、問題で表された関係を図に表したりするような活動を取り上げている。
(略)
引用者コメント:
・51:37で立式と具体的状況の一意対応を指導する問題を出している。これは今回確認した4社の中で日本文教出版だけである。
・「絵本づくりについて」はブロック操作、お話づくり、絵本づくりが学習指導要領に例示された算数的活動に該当することを主張。
・子ども一人一人が合併と増加のお話づくりをすることを要求しないまでも、発表では両方を要求する。
・大阪書籍時代から教科書記述では合併と増加の区別は目立たない。しかし2011年の指導書では上に見るようにかなり強力に区別の指導を推し進めている。
・2002年の指導書は、合併と増加を区別するものの、それを子どもに教えるためにあまり積極的な手立てを講じていない印象がある。これは、同年の2年生の指導書にもいえることであり、そこでは掛算は順序つきで指導されるものの、逆順で数字が出現する文章題が皆無であった。事業譲渡に伴う変化の可能性は排除できない。
啓林館
38-A:/
たし算が用いられる場面の理解
たし算が用いられる場面は次の2つである。
合併・・・同時に存在する2つの数量を合わせた大きさを求める場合
増加・・・初めにある数量に追加したときの大きさを求める場合
この合併と増加の場面を理解させるために、必ず数図ブロックによる算数的活動をさせることが大切である。「合併」は2組のものを1つにまとめる操作であり、数図ブロックは両手で合わせる。「増加」はすでにあるものに追加する操作であり、数図ブロックは片手で合わせる。
38:38
動作で理解させる
合併とは、同時に存在する2つの数量をいっしょにすることである。その意味を理解させるために、両手で両側から包み込むようにして、数図ブロックを合わせる動作をさせることが重要である。
40:40
動作で理解させる
増加とは、初めに存在している数量にもう一方の数量がつけ加わることである。その意味を理解させるために、左に置いた数図ブロックを固定したまま、右に置いた数図ブロックを右手で右側から左に押していくような動作をさせることが重要である。
左側から数図ブロックを押しても、合わせた数は変わらないが、「+」の左右に書かれる2つの数との対応を明確にさせるために、本時では、右側から数図ブロックを追加することを守らせるようにする。
41:41
「合わせる」と「増える」は同じ式
合併と増加は、場面やそれが意味するところは異なるが、答えを求める上では同じであることを意識させる必要がある。そのため、式も同じものになると理解させるとよい。
引用者コメント:
・たぶん啓林だったとおもうが、式には場面を表す式と計算を表す式があるという趣旨の文を指導書に書いていた。
大日本図書
61:33
たし算(合併)の意味のとらえさせ方
「金魚が女の子のバケツに3匹、男の子のバケツに2匹いる。」というとき、3匹と2匹をばらばらに見ていたのでは、何の意味も生じない。これをひとまとめにして数えようとするとき、1つの関係が生ずる。この関係がたし算という演算であり、そのことを視覚的にとらえさせようとしたのが、(教)p.34の手によるブロックの操作である。この段階の児童にどういうときにたし算が用いられるのかを説明させることは困難なので、ブロ ックに置き換え、操作を通して合併の意味をとらえられるようにしていくことが大切である。そして、ブロックで操作したことを言葉や式で表現できることをおさえていく。
63:35
展開例2 合併の場面の加法についてまとめる。
単に答えを求めさせるだけでなく、「あわせて」、「ぜんぶで」、「みんなで」などの言葉とブロックの操作を結びつけて、合併の場面は加法の式で答えが求められることをまとめさせる。
64:36
本文
えを みて、4+3の しきに なる おはなしを しましょう。
きいろい ふうせんが 4こ、あかい ふうせんが 3 こ あります。 ふうせんは あわせて / ぜんぶで なんこ あるでしょう。
赤字は朱書き。教科書にはない。
欄外
キャラクターのふき出しを扱い、既習の「あわせて」、「ぜんぶで」、「みんなで」などの言葉を復習する。
65:37
たし算(増加)の意味のとらえさせ方
「金魚が5匹いるところへ、2匹入れる。」という増加の場面で、金魚をブロックに置き換えてブロックをどのように操作するか考えさせる。ここでは、5個のブロックはそのままで、2個のブロックを片手で動かしてひとまとめにすることになり、合併の場面と手の動きに違いがある。しかし、結果的にはどちらも2つの数量の和を求めていることから加法の式に表せることを理解させていく。
引用者コメント:
・大日本は2002年から片手と両手の操作で増加と合併を区別することと、キーワードへの注目を指導書で促している。