『新しい算数2下教師用指導書』。東京書籍。2011年。

指導編18頁、教科書6頁。

■乗法の式の指導について

 1台に5人ずつ、3台に乗っている全部の人数を求めるという問題で、具体的な操作を通して、「1つ分の数」「いくつ分」「全部の数」の意味を十分に理解し、式に表していくことが大切である。

[*****] [*****] [*****]

1台に5人ずつ   の 3台分  で        15人

<おはじきの数> <おはじきを囲んだ○の数> <おはじき全部の数>

 また、「5枚のお皿にりんごが2個ずつのっています。りんごは全部で何個でしょう」という問題で誤って「5×2=10」と書く児童がいる。これは、問題の数字だけ見て答えた結果である。このようなことが起こらないように、おはじきを並べる活動を通して、場面を想像し、言葉で表現しながら、乗法の場面としてとらえたり、式の意味を確実に理解したりできるように指導したい。

指導編19頁、教科書7頁。

(3)*と(4)**は、4×5と5×4の場面である。おはじきを並べることによって、「1つ分の数」「いくつ分」を明らかにさせる。また、答えが同じになることを確認させる。

以下は、教科書記述内への朱書き。赤太字は実際には朱枠で囲む。

*(単三電池が)1パック4こずつ5パック分で、20こ。

**(鉛筆キャップが)1ふくろ5こずつ4ふくろ分で、20こ。

指導編20頁、教科書8頁。

■[3>の問題のねらい ([n>は右向き三角の中に数字)

 [3>の問題の主たるねらいは、乗法の式からその場面をおはじきで表したり、並んだおはじきから乗法の式に表したりすることを通して、乗法の理解を確実にすることである。式に表す、式を読むという両方の活動を通して、式とおはじきで表した結果を対応させることで、乗法の式の「かけられる数」が「1つ分の数」を、「かける数」が「いくつ分」を表していることを確実に理解させる。

 また、「1つ分の数」と「いくつ分」の区別を、おはじきを使った操作活動を通して確認させ、理解を確かなものにしていきたい。

教科書への朱書き

男児と女児のペアその1の右隅:置き方が違っても、「3この2つ分」が同じであることに気づかせる。

男児と女児のペアその2の右隅:口頭で答えさせたり、ノートに書かせたりする。

指導編21頁、教科書9頁。

6こずつ:1つ分の数

4はこ:いくつ分

しき 6 × 4

どうして その しきに なるのかな。

言葉や図で説明させる。

[4>の左欄外に○5と注記

朱書きで問題への答え:

3x4=12 (3+3+3+3=12) 答え 12こ 8x3=24 (8+8+8=24)  答え  24本

4x6=24 (4+4+4+4+4+4=24) 答え  24本

7+7+7+7+7=35 答え 35

同じ数字を何度もたすのは大変だが、答えは累加で求められる。

欄外に

○5 適用問題

●[4>, [5>問題に取り組む。

[知] 乗法の答えは、被乗数を乗数の数だけ累加して求められることを理解している。(ノート)

指導編32頁、教科書20頁。

[4> 4×3と答えが同じになる3の段の九九

欄外註:

アレイ図をかいて、答えが同じになることを確認させる。→研p.19~20

[技] 4の段の九九を確実に唱えることができ、それを用いて問題を解決することができる。(発表・ノート)

指導編33頁、教科書21頁。

[5>は4×3になる問題と3×4になる問題をつくる問題。

〈4×3〉問題文中の□に4, 3を入れる。4×3=12  答え  12こ

〈3×4〉みかんが3こずつ 入って いる ふくろが、4ふくろ あります。

3×4=12  答え  12こ

欄外註:

4 気づいたことを話し合い、まとめる。

・「1つ分の数」とその「いくつ分」かが分かれば、式を作ることができることについてまとめさせる。

5 [5>の問題に取り組む。

・問題と式を比べ、「1つ分の数」と「いくつ分」を用語「かけられる数」と「かける数」を使って、説明させるようにする。

研究編35頁(教科書20頁に対応する)。

活動内容

○ノートに縦4個ずつ、横3個ずつ○をかき、立てに4個ずつ鉛筆で囲んで、4×3の式と対応させる。

○横に3個ずつ鉛筆で囲んで、3×4の式と対応させる。

→理解が不十分な子には、ノートの向きを変えて、見る視点を変えてみるように助言する。

留意点(*)、評価規準

*縦4個×横3個の○を2つかいたワークシートを配布し、児童に考えさせて、4×3、3×4を表現させるという展開も考えられる。

*被乗数が縦、乗数が横でなくても、自分の囲み方と式を結びつけて説明できれば、縦横はどちらでもよい。

研究編36頁(教科書21頁に対応する)。

4×3になる問題と3×4になる問題を別個に作らせる活動。

留意点(*)、評価規準

*●を用いた図もかかせ、どちらも全部のみかんの数は12個であることを確かめさせる。

[知] 被乗数、乗数の意味を理解している。【発言】

指導編59頁、教科書43頁。

[3> 子どもが 6人 います。 1人(ひとり)にあめを 7こずつ くばります。 あめは 何こ いりますか。

朱:7×6=42  答え  42こ

欄外註:

→教p.32

文章の中には「いくつ分」「1つ分の数」の順に数値が出てくる。アレイ図で表すなどして、「1つ分の数」と「いくつ分」を明らかにする。

[4> 8cmの テープが 7本 あります。 そのうちの 5本を つなぎます。 つないだ テープの 長(なが)さは 何cmですか。

朱:8×5=40  答え  40cm

欄外註:

→教p.34

問題に不要な数値が入っているので、必要な数値を見出させることを大切に扱う。

指導編59頁、教科書43頁の欄外註にしたがって教科書32頁、34頁の記述を引用

指導編48頁、教科書32頁。

「7のだんの 九九を おぼえましょう」

星1 7の段の九九を「見なおす」活動。途中までは交換法則を使って既習の段から値を得られることが本文にある。同じく分配法則を使って値を求めることも紹介されている。本文にあるのは7×9を5×9と4×9の和として構成する方法。「アレイ図を用いて確かめさせる」と朱書きにある。

[2> 7cmの 電車(でんしゃ)の おもちゃの 4ばいの 長(なが)さは、何(なん)cmですか。

朱書きで問題への答え:

7×4=28  答え  28cm

[3> 色紙(いろがみ)を、7まいずつ 5人に くばります。 色紙は、ぜんぶで 何まい いりますか。

朱書きで問題への答え:

7×5=35  答え  35まい

欄外註:

1 [2>の問題に取り組む。

・連続量を扱い、「倍」の概念を確実にさせる。

2 [3>の問題に取り組む。

・「7枚ずつ5人に配る」には「7枚の5つ分」いることをとらえさせる。

[技] 7の段のくくを確実に唱えることができ、それを用いて問題を解決することができる。(ノート)

研究編53頁(指導編48頁、教科書32頁に対応)。

7cmの4つ分だから、7×4になります。

7枚の5つ分だから、7×5になります。

という反応例に対し、

*式と答えだけでなく、理由も書かせる。

[技] 7の段の九九を確実に唱えることができ、それを用いて問題を解決することができる。 【ノート】

という留意点がある。九九の表にも被乗数と乗数があり、それが文章題の被乗数と乗数と厳密に対応していなければならないということを主張している。

指導編50頁、教科書34頁。

「8のだん、9のだんの 九九を おぼえましょう」

星1 8、9の段の九九を「見なおす」活動。

教科書32頁と同じように交換法則、分配法則の有効性を「アレイ図を用いて、確かめさせる」と指導編にある。

[1> □に数(かず)を 入れて、8×9の しきに なる もんだいを つくりましょう。また、9×8でも つくりましょう。

あやさんは、1日に □ページずつ 本を 読(よ)みます。 □日間(かん)では、何ページ 読(よ)む ことに なりますか。

8, 9 8×9=72  答え  72ページ

9, 8 9×8=72  答え  72ページ

欄外註:

1 [1>の問題に取り組む。

(略)

・作問活動を取り入れることにより、算数を生活の中で積極的に活用していこうとする意欲を高めさせる。

2 各自考えた問題を発表し、8×9の問題と9×8の問題をひかくして話し合う。

・各自ノートに書かせた後で、発表し合い、お互いに検討し合わせる。

・8×9の式になる問題と9×8の式になる問題を見比べ、被乗数と乗数の関係について再度確認させる。

[技] 8の段、9の段の九九を確実に唱えることができ、それを用いて問題を解決することができる。(観察・発表・ノート)

□作問活動を取り入れて

 8の段、9の段の構成を終えた段階頃から、既習の段の九九の式を手がかりとして具体的な場面の問題をつくったり、解決しあったりする過程を取り入れるようにするとよい。このことは、式から具体的な場面を読み取ることを通して、算数を生活の中で積極的に活用していこうとする意欲を高めることに効果的と考えられる。児童がつくった問題は、みんなに紹介したり、お互いに解き合ったりして追加問題として活用していきたい。

以下は研究編の内、単元の指導案を示す前に単元全体について一般的な解説をしている部分からの引用である。掛算は2単元に分けて指導されるので、二つの部分から引用した。

研究編17-8。

乗法の意味指導

 乗法が用いられる代表的な場合は、

(1) ある数量を単位として、それをいくつか集めたとき、「単位とする大きさのいくつ分」から全体の数量を求める。

(2) 除法を用いる場合の逆の計算として、乗法を用いる。

などがあるが、本単元では、(1)の場合について、乗法の意味を理解させる。

 ここで大切にすることは、どの数量を「単位とする大きさ」と意識するかということであり、さらに、そのまとまりが「いくつ分」あるかを明確にして、全体の大きさを、「単位とする大きさのいくつ分」ととらえることである。

 とらえる過程で、児童には、次のような点で抵抗がみられることが多い。

(ア) 何を、「単位とする大きさ」としてとらえたらよいかを判断すること。

(イ) 「単位とする大きさのいくつ分」としてとらえた大きさが、「全体」としてとらえた大きさであることを理解すること。

 そこで、(ア)の対策として、教科書p.3~4では、遊園地でいろいろな乗り物に乗って遊んでいる子どもの人数を調べる場面を提示している(2年下p.4のコーヒーカップの挿絵あり)。1台に同じ人数ずつ乗っている子どもの数を、「1台ごと」に注目することにより「単位とする大きさ」の考え方をとらえやすくしている。また、自転車もゴーカートも飛行機も全体の人数は同じ12人であるが、1台に乗る人数が違うことから、何を 「単位とする大きさ」とすればよいか、「単位とする大きさ」はいくつあるかを意識させるようにする。

 さらに、乗る人数が同じ12人でもコーヒーカップは1台ごとに乗っている子どもの人数が違うため、このままでは「単位とする大きさ」がとらえられないことから、4人乗っている1台から1人を、2人乗っている1台へ移動させることにより、「単位とする大きさ」を3人として、「3人の4つ分」と乗法でとらえることができることを指導するようにしたい。

 (イ)の対策としては、教科書p.6では、まず、1台に乗っている子どもの数が何人であるかを考えさせ、それから子どもの全体の数が「汽車に乗っている子どもの人数は、1台に5人ずつの3台分で、15人」であることを具体物を用いて理解させる。そこで、「1台に5人ずつの3台分」であることと、全体の人数は「15人」であることとは同一であることをおさえるようにする。

[●●●●●][●●●●●][●●●●●]→●●●●●●●●●●●●●●●

 この理解を基に、乗法の式表現として、「5人の3台分」は「5×3」と書くこと、等号を用いて「5×3=15」と表されることを導くようにしている。

倍の意味指導

 整数倍の意味の理解は、「12は3の4倍である」というとらえ方が自由にできるようになって、はじめてされたといえる。このようなとらえ方が徐々にできるようにするために、本単元では、次のようにして理解を図るようにする。

 2量を対比し、一方の量を1とみて、他方の量がそのいくつ分であるかを考えることは、児童にとってとらえにくい内容である。ここで分離量を題材として何個かのものをひとまとまりにし、それを1とみることは難しいので、まず教科書p.10[4]ではひとまとまりの量としてとらえやすい連続量を取り上げている(2年下p10の挿絵あり)。

 本単元では、基準量の○倍の長さを乗法で求める学習をする。次単元では、基準量が異なる場合の○倍の長さを求めさせ、同じ○倍でも比較量が異なることを、具体的な場面を通して学習する(2年下p.37の2種類の長さのテープをそれぞれ3倍にする挿絵あり)。

研究編19-20頁。

アレイ図について

 右のような図をアレイ(array)図という(2年下p.89の挿絵あり)。教科書では、巻末のp.89ページに9×9までが表現されたアレイ図が掲載されており、各段の九九を構成する際に、切り取って利用することが想定されている。

 アレイ図は、基準量となる数だけ●が縦に並び、それが横に9列示されており、「単位とする大きさのいくつ分」という乗法の意味をイメージするのに役立つ。また、数の大きさを量的にとらえることができるという利点もある。

 各段の九九を構成する段階では、右の図のように、不要な段を隠し(2年下p.13の挿絵あり)、不要な乗数の部分は最初は隠しておき、乗数が1増えるのに合わせて、隠している紙を右に1つずつずらし、●が被乗数ずつ増えていくのが目で見えるようにするとよい。

 また、教科書p.28「算数のおはなし」でおはじきを使って紹介している分配法則の内容は、アレイ図を使うと、p.30(第13単元)のように表現できる(2年下p.30の挿絵あり)。

 また、教科書p.20[4>では4×3と答えが同じになる3の段の九九を見つけさせている(2年下p.20の挿絵あり)。このような問題を、ほかのいくつかの数についてアレイ図を用いて考えさせ、帰納的に考えて「乗数と被乗数を交換しても積は同じになる」という乗法に関するきまり(乗法の交換法則)を見つけるようにする。

 このように、アレイ図を用いて乗法に関するいろいろな性質や決まりを見つける学習をさせることを通して、発見する楽しさを児童に味わせたい。

被乗数と乗数の意味とその役割

 乗法における被乗数と乗数の意味は、加法の被加数と加数や、減法の被減数と減数のように同質のものではなく、異質なものである。

 被乗数は「1つ分の数」であり、乗数はその「いくつ分」であることを表す数である。

 例えば、「りんごが1列に5個ずつ、3列並んでいる。りんごは全部で何個あるか」というときの「3」は、りんごの数に目をむけると、5個の3つ分の「3」、5個の3倍を表す「3」、5個を3回集める「3」であり、もはや3列の「3」ではない(縦5×横3にりんごが並ぶ挿絵あり)。

 このように、「はたらきを表す数」としての乗数の意味をとらえ、3列→3つ分のように数の見方を転換することの理解が、児童には難しい。具体的な場面から「1つ分の数」と「いくつ分」をとらえさせ、乗法の式を立式させることを通して、被乗数と乗数の相違に気づかせ、乗数を「はたらきの数」として理解させることが大切である。問題文中に被乗数、乗数の順に数字が表れていない文章題にあえて取り組ませることによって、このことを意識させていくのも有効である。

被乗数先唱と乗数先唱

 乗法九九の唱え方には、被乗数先唱(被乗数、乗数、積)と乗数先唱(乗数、被乗数、積)の2つの方法がある。

 被乗数先唱には、式を左から右へと書いたり、読んだりすることに合致していること、aのb倍という思考の順にも適合していること、a+a=a×2の乗法の意味理解にも通じることなどの利点がある。また、乗数先唱には、筆算における乗法計算では乗数を基本とし、除法でも除数を基本とするという習慣に合致するという利点がある。

 このように、それぞれの方法には利点があるが、現在では、被乗数先唱で唱えるようになっている。しかし、被乗数先唱といっても、いつまでも被乗数先唱で通すということではなく、九九を覚えるまでの過程として唱え方を一定しようとするものである。

研究編46-7頁。

被乗数と乗数の意味の指導

 前単元において、乗法の意味の指導とあわせて、被乗数と乗数の意味についての指導をしている。ある数量を単位として、全体量を「単位とする数量aの□つ分」ととらえ、これを「a×□」と表現することの指導にあわせて、被乗数は「単位とする数量」を、乗数は単位とする数量の「いくつ分」を表すものであり、この両者は質的にまったく異なるものであることを指導してきた。前単元では、用語「かけられる数」「かける数」を導入する ことによって、さらに深められてきているだろう。

[> 「単位とする数量のとらえ方」

 本単元では、被乗数と乗数の意味について、アレイ図と関連させて理解するようにさせたい。例えば、教科書p.34の[1>では、8×9の式の「単位とする数量」は8であり、9×8の式の「単位とする数量」は9である。「単位とする数量」の分、アレイ図の●を囲ませるなどの操作をすることで具体的に理解させ、8×9、9×8の式になるような問題づくりができるようにしていく。

 また、教科書p.41[1]の切手の枚数のいろいろな求め方を考える問題では、「単位とする数量」のとらえ方を変えることにより、式が変わること、全体の数量は多様な求め方で考えることができることを経験させる。このような経験を通して、被乗数と乗数の理解を一層深められるように意図した展開になっているのである。

乗法の交換法則

 乗法の交換法則は、6×4=4×6のような等式で表現することができる。このような式は、前述した被乗数と乗数の質的な違いを無視することによって成立している。児童はこれまでに被乗数と乗数の使い分けについてアレイ図を基に考えてきているので、不用意にこの式を導入して形式的な取り扱いを急ぐと、児童は混乱を起こす恐れがある。

[> 交換法則と式の関連付け

 そこで、乗法の交換法則を等式で表して指導する場合には、次のことをはっきりさせておく必要がある。交換法則で6×と4×6を等号で結ぶのは、6×4の大きさと4×6の大きさが等しいことを表しているのであって、演算の意味が同じであることを表しているわけではない。

 しかし、このことを理解するのは第2学年の児童にとっては難しい。そこで、第2学年の段階では、交換法則が成り立つことを表している具体的な場面や事柄を扱うことを主とし、アレイ図などを利用して具体的に取り扱うようにし、最後に九九表の観察を通してきまりをまとめる学習(教科書p.39)において、言葉と式でまとめるようにしている。

研究編47-8頁。

乗法九九指導の変遷

(……)総九九の長所とするところは、当時(引用者註:制限九九の時代)でも以下のように考えられていた。

 第1に2×5と5×2は違った内容の事柄を表すものであるから、これを用いれば、指導の始めから、交換法則を導入することなしに指導できる自然さがあることである。

書式の凡例

下線部は書名、ページ数、章立てなどによって引用箇所をできるだけ正確に特定する。

太字部はサブタイトルまたは小見出し。見出し単位の大小はフォントの大きさで区別しようとしたが、記憶が正確でないかもしれない。

黄色の背景部は引用者によるコメント。